ただいま冷徹上司を調・教・中!
「でも、俺の趣味に無理やり合わせるのは……」

「そんなこと気にしなくていいんですって。女だって彼のことを知りたいものです」

確かになかには自分のこと以外に興味を持たない女性もいる。

自分のことだけを考えていてほしい女は少なくはない。

けれど平嶋課長の現在の彼女は私なんだ。

「私は『彼女』として平嶋課長のこと、もっとたくさん知りたいですよ?」

平嶋課長には、私の知らない顔が山ほどあるだろう。

それを少しづつでも見ることができたら、きっと私の中でなにかが大きく変わる気がした。

「そんなこと言われたのは初めてだ……」

なんだか嬉しそうに、はにかむように笑った平嶋課長の表情は、格好良いと言うよりも可愛かった。

「私の行きたいとこ、ちゃんと着いてきてくださいね。平嶋課長の行きたいとこにも着いていきますから」

「わかった。ありがとう」

「でも、その前に……」

私は大きな平嶋課長の手のひらに、するりと自分の手を滑り込ませた。

「久瀬っ。ちょっと……」

キュッと手を握ると、平嶋課長大袈裟なくらい慌てふためく。

「さっき迷子になりかけたでしょ?これが一番自然です」

繋いだ手を平嶋課長にみせつけるかのように掲げてみせると、平嶋課長は観念したかのようにクシャっとあどけない笑顔を見せてくれた。

「よろしく、彼女さん」

優しい顔でそう言われ、私の心臓がドキッと大きく音を立てた。

全くイケメンはこれだから恐ろしい。

「よろしく、彼氏さん」

負けじと平常心で切り返し、私と平嶋課長は緩く手を繋いだままでショッピングを再開させた。
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