ただいま冷徹上司を調・教・中!
「久瀬の思うようにしてくれていいよ。これも恋人にとっては必要事項なんだろ?」

平嶋課長にそう問われて、『いえ、ただの私の趣味です』と言えなくなった私は、返事を濁すために満面の笑みで誤魔化した。

結局全て私の趣味で揃えられた食器類は、平嶋課長が買ってくれた。

重くなってしまった二重になった紙袋を平嶋課長が軽々と持つと、私達はすっかり当たり前のように手を繋いだ。

この学んだことへと吸収力は素晴らしいと思う。

駐車場に着くとトランクに荷物を乗せて、私達はアウトレットを後にした。

「女性とショッピングして楽しかったと思ったのは初めてだ」

平嶋課長からそう言われると、なんだかくすぐったい気持ちになるのはなぜだろう。

苦手意識がなくなった後に残った感情は……。

いやいや、考えるのはやめておこう。

面倒くさいことになってしまいそうだから。

「久瀬には教えられてばかりだけど、それも楽しかったりする。ありがとな」

平嶋課長は前を向いたままだけど、どれだけヤバい笑顔かは横顔だけでもわかる。

「どういたしまして」

へらっと笑ってそう言えたけれど、この笑顔を正面で見たら、女はコロッと堕ちちゃうんじゃないかと思うと怖くなってくる。

もう少し一緒にいてもいいかなぁと思っていたとき、車は私の家の前で停車してしまった。

時計は17時を回ったくらい。

軽くドライブして晩御飯でも、という発想はなかったのかよ。

どんなに心の中で毒ついても、『どうぞ降りてください』とばかりに車はピッタリと止まっている。

「今日はありがとうございました。楽しかったです」

シートベルトを外して車のドアを開けると、平嶋課長も降りてきてトランクを開けてくれた。
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