ただいま冷徹上司を調・教・中!
「紗月さんに言われると私も納得できます。それにしても千尋さん」

瑠衣ちゃんが真剣な顔で左隣の私を見るものだから、思わず真正面の紗月さんに助けを求める視線を送るが、それはするりと避けられてしまった。

「私どうしてもわからないことがあるんです」

「なあに?」

「吉澤さんの魅力についてです。千尋さんは吉澤さんの何がよくて三年も付き合ってるんですか?私には全く理解ができません。千尋さんは頭もいいし仕事できるし、顔だって童顔で色気はないけど可愛いです。別に吉澤さんじゃなくてもいいじゃないですか」

正式には、まだ付き合って二年半だ。

そう突っ込みたくなったが、そこはスルーしてしまうことにした。

なぜなら今日でその関係を綺麗サッパリと清算するつもりだからだ。

「人それぞれ良いところもあれば、そうでないところもあるじゃない?だけどやっぱり良いところが勝ってるから付き合ってこれたわけだけど」

そう、どんなに標準だといっても、和宏は本当に優しくて私をとても大切にしてくれていたと思う。

あまりにも大切にされて優しくされて、本当に愛されているんだと勘違いしていたのかもしれない。

そしてその心の安定やゆとりが、私の中に慢心と安心を生み出してしまい、何の努力をせずともこのまま付き合い続けていけると思い込んでしまったのだ。

影で裏切られていたとも知らずに。
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