ただいま冷徹上司を調・教・中!
ふっと陰った私の表情を紗月さんが見落とすはずはなく、眉を寄せ私を見つめて「なにかあったの?」と心配そうに聞いてきた。

さすがはスーパーウーマンで、私の頼りになるお姉さまだ。

人の変化を見逃さず、救いの手を差し伸べてくれるところも、平嶋課長が紗月さんを大きく評価している一つなのだろう。

「昼休み、聞いてもらってもいいですか?」

そしてその優しさにすぐ甘えてしまうところが、私がまだまだな理由の一つなのかもしれない。

「それはかまわないけど……。嫌な予感がするわね」

「そのカン、たぶん外れないと思います」

ワクワクしながら私と紗月さんの話に割って入ろうとした瑠衣ちゃんだったが、電話の音に阻まれ渋々受話器を取った。

その間に私達は仕事モードに切り替わり、この話が蒸し返されることはなかった。

しかしいくら課が違うとはいえ、梨央と同じ空気を吸うのも気分が悪い。

いつもなら給湯室に備え付けられている給茶機やコーヒーマシンの前で、よく梨央と顔を合わせて雑談の一つでもするのだが。

今日は給湯室にすら立ち寄りたくもなかったので、家のコーヒーメーカーで淹れたコーヒーを持参してきた。

休憩室は全科合同だけれど、使用せずにデスクで昼食を済ませれば、今日はもう梨央に会うこともないだろう。

私はそう簡単に考えていた。
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