ただいま冷徹上司を調・教・中!
平嶋課長をリビングというには狭いスペースに通すと、ソファーに座らせた。

「ちょっと待っててください。今コーヒー淹れて来ます」

「お構いなく」

落ち着かないのか、取引先の応接室のように姿勢を正して軽くお辞儀をしている。

いやいや、コーヒー一杯でもなきゃ、話も何もできやしないじゃないか。

「ゆっくりしといてください」

私はキッチンでコーヒーメーカーのスイッチを押した。

食器棚を開いてコーヒーカップを出そうとして、はた、と気付く。

男性物がない……。

和宏もそうだが、他にも付き合った男性はいたけれど、専用のカップも不必要だったほど、自分のテリトリーに人を入れなかったのかと思うと笑いが込み上げてきそうになった。

反対に言えばそこまで深く求められなかったともいえるだろう。

……かなり悲しくないか?

下手に落ち込む前に切り替えよう。

良い香りがするコーヒーを淹れて平嶋課長の待つリビングの戻ると、私を悩ます出来事が待っていた。

ソファーに座る平嶋課長の前にあるテーブルに向かうようにしてカップを置いたが、自分自身が座るスペースがない。

ソファーは二人掛けだから、二人で座るには密着度が高いだろう。

かと言って床に座るのも不自然じゃない?

必至に自分の場所を模索していると、平嶋課長がソファーの端に寄り、「ここ、座れば?」と誘う。

よりにもよって、一番難易度が高いと思っていた場所だというのに……。
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