ただいま冷徹上司を調・教・中!
よく考えたら、平嶋課長がこの部屋に入るのは二度目のはず。

一度目だって私から強引に誘って上げたんだった。

今となって思えば、あの時の私はなんて大胆なことをしでかしたのだろう。

打算的なことで頭がいっぱいで、平嶋課長をこんなに好きになるなんて思いもしなかった。

だから平気でいられたんだ。

今の私と全然違うじゃないか。

諦めや妥協がない『好き』は、私をこんなにも大きく変えてしまう。

同じ空間にいるだけで緊張して。

時折触れる腕が焼けるように熱く感じて。

鼓動が乱れて目眩を起こしそうだ。

これが本気で人を好きになるということなのだろう。

そんな人と、どんな経緯があるにせよ、今こうして並んでいられる。

それは奇跡に近いことなんだ。

そんなことを考えていると。

「ごめん……」

平嶋課長の一言が、私を現実へと引き戻した。

「なんの『ごめん』ですか?」

申し訳なさそうな平嶋課長に向き直って、私はストレートに聞いてみた。

「なにに対して謝ればいいのかがわかってないことに『ごめん』……かな」

「なんですか、それ」

平嶋課長の中ではきっと、私が自分を好きだなんて発想は全くないだろう。

だったら私がどうして怒ったのか、わからなくてもしょうがない。

平嶋課長には、ちゃんと言葉で偽りなく伝えなくては。

しっかりと受け止めてくれる彼には、飾りや偽りの言葉は不必要。

思いのままを口にしよう。
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