ただいま冷徹上司を調・教・中!
「俺は仕事にはその人の性格や考え方が滲み出るものだと思ってる。だから仕事を見てれば久瀬の性格も把握できるぞ?」

「この場合、仕事とプライベートは分けて考えてください。仕事とプライベートでの私は完全に別物なので」

多くを望めないとはわかっているけれど、仕事の延長線上に私達の関係があるとは思いたくない。

「完全にわけて考えるとなると、俺は何もわからなくなるな」

眉を寄せて苦笑いを浮かべた平嶋課長を見て、私はなんとも言えない切ない気持ちになってしまった。

平嶋課長も私と同じ。

私達は恋人同士といえど、仮である以上、踏み込むラインを探しているんだ。

「平嶋課長。もっと私のことを見てください。もっと私のことを知って欲しいです」

今は偽りでもいい。

もっとちゃんと女として私を見て欲しい。

女として平嶋課長の隣にいる私を、ちゃんと認めて欲しいの。

「私ももっと平嶋課長を知りたいです。平嶋課長としてもそうだけど、平嶋凱莉という男性を知りたい」

課長としてではなくて、一人の男性として私と接して欲しい。

私が惹かれたのは『平嶋凱莉』なのだから。

「久瀬。俺な、正直いって久瀬とどう接したらいいのかわからなくて、距離を図りかねてるんだ」

「それは私もです」

「俺はお前の上司で、お互いの利害関係のもと、こういうことになったわけだが……」

両膝に肘をついて真剣に考えている様は、何度も見ている平嶋課長の悩んでいる時の表情だ。

「今の久瀬の言葉を紐解くと、本当に仮だと考えない方がいいということか?」

平嶋課長の辿り着いた答えは、まさしく私が願っていた答えと同じだった。
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