ただいま冷徹上司を調・教・中!
「平嶋課長」

「なんだ、その微妙な顔は」

「………」

そりゃ企みある顔なのだから、決して可愛いとは言えないかもしれないが。

微妙な顔とは、ずいぶんと失礼じゃないか。

「せっかくいいこと思いついたのに」

ぷくっと膨れた私に向かい、平嶋課長は慌てて「うそ。可愛いよ」とか言ってくれちゃった。

もう、本当に……。

危うく鼻血吹きそうになったじゃない。

気を取り直して平嶋課長と向き合うと、その大きくて角張った男らしい手を両手で包んだ。

ドキドキと激しく打ち鳴らす鼓動は、どんなに頑張っても落ち着きを取り戻すことができなさそうなので、放置することにした。

「私のこと、『千尋』って呼んでください」

「はあっ!?」

あまりの驚きに飛び上がるんじゃないかと心配になるほど、平嶋課長は取り乱して私を凝視する。

「プライベートでは、私のことを千尋って、名前で呼んでください」

「いやいや、さすがにそれは……」

「仕事とプライベートをしっかり分けるためですっ」

強めにそう言うと、平嶋課長はぐっと言葉に詰まった。

「平嶋課長のご要望通り、公私混同しないように、二人でいる時は名前で呼び合いましょう?私も平嶋課長のこと、名前で呼びますから。平嶋課長もちゃんと名前で呼んでください。これで解決。なんの問題もありません。万事OKですっ」

畳み掛けるように一気に言葉を連ねると、平嶋課長はいつもの様に眉を寄せて頭を整理しているようだ。

もう何も考えなくてもいいのに。

どうせ私に言い負かされて、結局は提示された案を呑むしかなくなるんだから。
< 143 / 246 >

この作品をシェア

pagetop