ただいま冷徹上司を調・教・中!
まだ何も機能していない体を起こしたのは、激しく窓を叩く雨の音だった。

「嘘でしょ……」

慌ててカーテンを開けると、かなり降っているようだった。

昨日の天気予報では、降水確率は30%の曇りだったはず。

私はスマホで今日一日の天気予報を確認する。

待ち合わせの10時くらいからは晴れの予報になっていた。

「今だけならよかった」

初めての待ち合わせデートに心を躍らせながら身支度を進めていると、分厚かった雲に隙間ができ、そこから光が差し込み始めた。

玄関を出るころにはすっかりいい天気になっていて、私の心も明るくなった。

電車で移動すること三駅。

この駅はさすがに人がひしめき合っている。

スマホで時間を確認すると、待ち合わせ時間には三十分以上もあった。

時間を潰すには事欠かないので、私はしばらくその辺をブラブラすることにした。

歩き始めて十分も経たないうちに、私はこの選択を後悔することになる。

「あら、千尋じゃない」

明るく嬉しそうに私に駆け寄ってきたのは、誰でもない、梨央だった。

最近となっては、すっかり忘れていた梨央の存在だったが、顔を見てしまえば黒い感情がにじみ出る。

こんなに心浮かれているときに、なんでこの女の顔なんて見なければいけないのか。

軽い頭痛を感じ、私は返事もせずに速足に通り過ぎようとしたのだけれど。

「ちょっと。それはないんじゃない?」

ぐいっと腕を取られ、私はこの状況を受け入れる覚悟をした……。
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