ただいま冷徹上司を調・教・中!
どんな顔をしたらいいのかわからない。

けれど梨央から平嶋課長の名前を聞くと、例えようのない不安が私を蝕む。

「そんな顔しないでよ」

どんな顔をしているかなんてわからないけれど、強ばっていることだけは何となくわかる。

「千尋と平嶋課長がデートだっていうのは平嶋課長から聞いたのよ」

「平嶋課長が……?」

「ええ。同じ電車に乗ってるのに気づいたから、声をかけたの」

なんだよ、そのドラマみたいな偶然は。

土曜日でこれだけの人がいる中、平嶋課長と出会う確率って、いったい何パーセントだと思ってるわけ?

「私がしつこく誘ったから千尋と待ち合わせしてることを教えてくれたの」

「……そう」

「それでね、私がここに来た理由なんだけど……」

梨央が急にトーン落として申し訳なさそうにそういうものだから、もう嫌な予感しかしない。

「途中で平嶋課長に仕事の電話が入って、急に引き返さなくちゃいけなくなったの。私にはよくわからなかったんだけど、なんか機械トラブルらしくて。かなり慌ててたから、私が千尋に伝えますって言ったのよ。だからここに来たってわけ」

「…………」

仕事?

機械トラブル……?

そんな都合のいい話があるものなのか?

紗月さんや瑠衣ちゃん達から聞けば、そうなのかと納得もできよう。

けれど今私にそれを伝えているのは梨央だ。

そう易々と信じられるはずがない。

ひょっとしたらこのまま私を信じさせて、平嶋課長と合流しようなんて腹積もりかもしれない。

そんな私の考えを見抜いたかのように、梨央はクスッと笑って私と肩を並べた。
< 151 / 246 >

この作品をシェア

pagetop