ただいま冷徹上司を調・教・中!
「私に何か裏があるとでも思っている顔ね」

「やだ、顔に出てた?」

他の人ならば慌てて取り繕うけれど、梨央相手ならば堂々と疑ってやる。

「嘘だと思うなら、平嶋課長に電話してみればいいじゃない」

焦った様子もなにもなく、サラリと連絡をしろと言ってのける。

この女に裏はないのだろうか。

「あ、ねぇ千尋。このあと買い物に行こうと思ってたの。付き合ってくれない?前はよく二人で出かけてたじゃない」

そう、少し前まで私達は本当に親友だった。

時間が合えば二人でよく出掛けもした。

ストレートな物言いをするけれど、私のことをとてもよくわかっていて、私にとって必要な優しさと厳しさを兼ね備えた友人だった。

あの時までは。

「千尋?」

「いやよ」

冷静に思い出せば、思いのほか悪いことばかりじゃなくて。

即答しなかった自分に腹ただしくなった。

「じゃ、ランチだけ。千尋が絶対好きになるお店がオープンしたの。行こうよ」

「いやだってば。どうして今さら梨央の顔見ながらご飯食べなきゃいけないの?お料理に失礼だわ」

今度は即答できたことに少しだけ安心しながら、「帰る」と残して梨央の横をすり抜けた。

「千尋っ。連絡しなくていいの?私が嘘言ってるかもしれないわよ?」

後ろから声がしたけれど、何も答えたくなくてそのまま人混みの中に紛れた。

別に梨央を信じたわけじゃない。

けれどこの後私を誘うくらいだから、私にとって変わって平嶋課長とどうこうしようとは考えてないだろう。

けれど。

「やっぱり信じられない」

私は駅の壁に寄り、一度だけ平嶋課長に電話をかけることにした。
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