ただいま冷徹上司を調・教・中!
これ以上、梨央に翻弄されてモヤモヤするなんてごめんだ。

スマホのコールが鳴れば鳴るほど、私の不安は大きくなっていく。

『もしもし』

途切れたコールの後に、小さく低い平嶋課長の声が聞こえた。

「もしもし、千尋です」

平嶋課長に合わせて、こちらも口元を手のひらで覆い小声になる。

『ああ。ごめんな、わざわざ電話してくれて』

「いえ、こちらこそ、すみません。こんなときに。平嶋課長、大丈夫ですか?」

梨央の話が本当なら、やはり迂闊に電話なんてかけない方がよかったのかもしれない。

どこの病院なのかはわからないけれど、平嶋課長が最近大きな機材を入れたところの中に大病院もある。

これは早々に切り上げた方が良さそうだ。

『ああ。問題ない。悪いが今、社内なんだ』

「あ、すみません。落ち着いたらまた連絡……」

してください。

その言葉は、『わかった。ごめんな』という平嶋課長の謝罪に遮られた。

なんだか焦っている気もしたし、やっぱりなにか問題があったに違いない。

梨央を完全に疑ってかかってしまったが、結果としてこれでよかった。

デートがダメになってしまったのは残念ではあるが、仕事とプライベートを迷わず選択できるのは平嶋課長の尊敬すべきところだ。

無事に解決できますように。

私はそう願ってスマホをカバンにしまい、ホームに向かった。
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