ただいま冷徹上司を調・教・中!
そんな自分の行動に、顔から火が出るほど恥ずかしくなって。

私は顔を凱莉さんの首筋に埋めて火照りを冷まそうとした。

けれど、この行動も随分と恥ずかしいものだと自覚してしまい、もう頭はパニックでどうしようもない。

そうなると今ここでこうして凱莉さんと二人きりでいることも、あろうことかルームウエアのままでいること、極めつけはすっぴんでいることも。

もう全てが恥ずかしくて仕方がなくなった。

「千尋……」

優しいトーンで囁かれては、もう蕩けてしまいそうだ。

「千尋とこうしていると、俺の中でいったい、何が本当のことなのかわからなくなる」

「……」

「千尋が俺を大きく変えるから。変われば変わるほど、こうしていることが当たり前だと錯覚してしまう」

『錯覚』

その言葉に心が苦しくなったけれど。

でも凱莉さんの紡ぐ言葉に何一つ嘘はないと思えた。

だったら……今は、錯覚だとしても私と同じ気持ちでいてくれてるんじゃないだろうか。

「千尋にこうされたら、千尋は本当に俺を受け入れてくれてるんじゃないかと勘違いするんだ」

凱莉さん……私の気持ちは錯覚でも勘違いでもありません。

そう心で叫びながら、腕を少し緩めて、真っ直ぐに凱莉さんの瞳を見つめた。

至近距離で見る凱莉さんの端正な顔と、湧き出る魅力的な雰囲気に誘われて、私の唇からは吐息が漏れた。

その瞬間……。

漏れた吐息が戻されるかのように。

私の唇は凱莉さんの唇に塞がれた……。
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