ただいま冷徹上司を調・教・中!
凱莉さんの優しい言葉を聞いてしまったら、自分の気持ちを伝えることなく、曖昧だけれど拒絶されない今の関係を続けてしまいそうになったからだ。

「私が平嶋課長の真面目さと優しさにつけ込んだんです。私の都合で好きに振り回して、なのに平嶋課長はいつも受け入れてくれた」

私が勝手に怒ろうが、どんなに上から目線でダメ出ししようが。

平嶋課長はその都度、私の言葉を理解して正解を探してくれた。

「平嶋課長ほどの男性が、そこまでしてくれて、仮であっても恋人のように接してくれたら、そりゃ好きになっちゃいますよ」

平嶋課長は何度か瞬きをして私の顔を凝視し、「……え?」と呟いた。

「欠点だって可愛いって思えちゃうし、私のために一生懸命になってくれるところなんて、そりゃもうたまりません。どんどんどんどん惹かれて惹かれて」

「ちょっと待て……」

平嶋課長は焦りからか混乱からか、私の方に手をかけて言葉を静止しようとする。

私の気持ちは決まってるのに、そう簡単に言葉を飲み込むなんてでこるはずがない。

「気付いた時には平嶋課長のことを本気で好きになってました。何度『仮』って言葉がもどかしく感じたかわかりません」

「千尋、ちょっと待て……」

「もう仮か本当かで悩みたくないんです。私は仮じゃ嫌だって思っちゃったんです。この気持ちは自分ではどうきようもないんですっ」

「だから待てって」

私の勢いよりも大きな平嶋課長の声が響き、私の言葉は完全に平嶋課長によって遮られてしまった。

平嶋課長は手のひらで頭を抑え、深い溜め息をつく。

表情を窺い知ることは出来ないが、この時私は悟ってしまった。

平嶋課長は私を受け入れない、と。
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