ただいま冷徹上司を調・教・中!
確かに平嶋課長ほどの男性が、本気で私を相手にする確率なんて、相当低いだろうなとは思っていた。

だからある程度は覚悟していたし、そのあとも諦めずに進めると思っていた。

だけど。

やっぱり想像と現実を突きつけられるのでは、心の軋み方が全然違う。

あーあ。

逃げ出したいなぁ。

涙がこみあげてきそうになって俯いたとき。

「千尋、ごめん」

平嶋課長は低く深くそう言った。

この関係は終了だと判決が下されたんだ。

こんなにショックだとは思わなかった。

さっきまでの勢いはどこへやら。

もう一度……なんて無理だよ。

握りしめた拳に、涙の粒がパタパタと零れ落ちる。

「千尋……」

私の頬を平嶋課長の温かい手が包む。

そっと上を向かされると、平嶋課長は眉を下げて切なそうに私を見つめていた。

「千尋、ごめん。俺がハッキリしなかったから悪かったんだな」

「……いえ……」

やめて。

謝罪を繰り返さないで。

「千尋にこんなこと言わせてしまって、悪かったと思ってる」

「やめてください……」

これ以上、惨めになりたくないのに、平嶋課長課長はに何度も謝る。

これ以上謝られたら、私の心が割れてしまう。

「本当なら、男の俺が先に言うべき言葉だったのにな。こういう所もダメで、本当にごめん」

「……え?」

平嶋課長は一体、何に対して謝っているんだろう。

私の瞬きで零れた涙は、平嶋課長の指に拭われた。
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