ただいま冷徹上司を調・教・中!
あれ……。

ということは。

もしかして今日こそはお泊り決行?

「凱莉さん、ビールで乾杯しましょう?」

恋人になったお祝いと、初めてのお泊りの記念に。

出しっぱなしでぬるくなったビールと冷蔵庫のビールを交換しようと立ち上がろうとしたとき。

「いや、俺はお茶でいい」

凱莉さんは私の動きを止めた。

「え。どうしてですか?」

「酒飲んだら帰れなくなるじゃないか」

「……え?帰る気ですか?」

「帰るだろ……」

開いた口が塞がらない。

この人の思考回路はいったいどうなっているのだろう。

ついさっき、ずっと一緒に、と甘い約束を交わしたではないか。

なのにもう帰るだと?

「ありえないでしょ、それ」

もう遠慮なんてしないし、我慢もしない。

言いたいことはちゃんと言葉にして伝える。

「この状況で私を置いて帰ろうっていうんですか?」

「置いて帰るとか、人聞きが悪いな」

「今まで凱莉さんと朝まで一緒に過ごせないのは、私達の関係が偽物だからだと思ってましたけど。違うんですか?」

そうだと思っていたから、今まで苦しんだし悩んだし諦めようとしてた。

でもこうなったからにはちゃんと答えてもらう。

「千尋……」

凱莉さんは私を見つめてバツが悪そうに眉を下げた。

「俺は……一緒に朝まで過ごしたくないんじゃない。過ごせないんだ」

……どういう意味?
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