ただいま冷徹上司を調・教・中!
いくつか考えられることはある。

けれどどれが正解かはわからない。

「それに……なんですか?」

想像もできないほどの爆弾発言でも飛び出すのではないか。

そんなことを考えて、一人で勝手にドキドキしていたのだが。

凱莉さんの答えは、ある意味、私の想像の遥か斜め上をいっていた。

「腕枕で眠る、とか、抱き合って眠る、とか。誰でもやっている王道なこと苦痛で仕方ない。そんなことも千尋にしてあげられないのに泊まるなんて、俺は絶対に無理だ」

「……は?」

……なんだそれ。

あまりにもしょうもなさ過ぎて、私はあんぐりと口を開けた。

「何言ってんですか?」

あまりにも……あまりにもくだらなくないか?

「そんな理由?本当にそんな理由で今までお泊りNGだったんですか?」

「そんな理由って。重大な問題だろう?」

「嘘だ。本当はもっと重大な問題を隠してるんじゃないんですか?」

「これ以上の重大な問題があるもんか。俺は女の夢ともいえるものを叶えてやれないんだぞ?」

こんなことを力説しているにのだから、凱莉さんはやはり本気で言っているのだろう。

私がいろいろと頭を抱えて悩んでいた時間、まるっと返して戴きたい。

「もう……。一人で勝手に教科書が正しいなんて思いこまないでくださいよ」

凱莉さんの教科書には、きっと女性の理想がたくさん詰め込まれていて、その主人公たちはこの上ない幸せを噛み締めているのだろう。

綺麗に作られた物語を、本気で女性の王道の夢だと思い込んでいるなんて。

呆れるほどに可愛らしい拗らせ方じゃないか。

かなりアホらしいけど。
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