ただいま冷徹上司を調・教・中!
そのアホさまでも堪らなく愛しく感じさせるなんて、凱莉さんはどれだけ私の中を侵食しているんだろう。

こういうところも貴重で可愛らしいのだが、女性の実態を教えてあげなければ、この先ずっと一緒に眠ることはできないであろう。

そのことを思うと、やはり答え合わせは必要だ。

「凱莉さんが王道だと思っている朝の迎え方が、現実問題として正しいのかどうか。ちゃんと解決してあげます」

男性の思い描いている女との朝の迎え方なんて、実際のところはほぼほぼ女にとっては迷惑なもが多いのだ。

理想が崩れ落ちるのは、女側ではなくて男側なのかもしれない。

私はソファーの上で凱莉さんと向かい合うように体を斜めに向けて座りなおした。

凱莉さんも同じように体を向け、学ぶ準備は整った。

「まず始めに。朝まで抱き合って眠る、というのは実際では不可能に近いです」

「そうなのか?」

「そもそも抱き合うのも大変じゃないですか?上の腕は回せば済むけど、下の腕はどうすんです?お互いの体の下に回そうもんなら五分と持ちません」

何かに気付かされたかのように、凱莉さんの目が見開かれる。

「お互いの体に回さず自分の体の下なりに置いていたとして。抱き合ってたら大体寝返りだって自由に打てないじゃないですか。あれは眠る前にぎゅっと抱き合うだけで充分なんです」

凱莉さんは私の手を軽く握ると、「千尋はそれで満足?」と不安気に聞いてきた。

凱莉さんはどこまで私の気持ちを優先してくれる。

そんな彼に触れるだけで、私はいつでも満足なんだ。

「当然です」

そろそろ自信を持っていただきたいものだ。
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