ただいま冷徹上司を調・教・中!
向き合う形で横になると、私は凱莉さんの頭を胸に抱いた。

「おい……なにしてるんだ」

「しっ」

まるで子供をあやすかのように、ゆっくりと凱莉さんの頭を撫でながら、凱莉さんの言葉を制した。

凱莉さんの耳を心音が聞こえるように胸に付ける。

「赤ちゃんはお母さんの鼓動を聞くと安心して眠るでしょ?凱莉さんだって昔はそうだったんだから、こうしてれば落ち着くはずなんです」

ゆるゆると髪を撫でていると、しばらくたって凱莉さんが一言「心地いいかもしれない」と小さな声で呟いた。

「そうでしょ?」

私は単純な凱莉さんにくすっと笑って解放した。

「私はこうやって寄り添っているだけで充分幸せです。凱莉さんもそう感じてくれるようになると嬉しいんだけどな」

好きな人の温もりがあるだけで、こんなにも気持ちが満たされる。

凱莉さんが少しでもそう感じてくれたらいいな。

そんなほっこりした気分で凱莉さんにくっつくと。

「千尋はあったかいな」

凱莉さんはそう言って微笑んでくれた。

「不思議だな。今まで絶対に無理だと思って、誰ともこんなふうに寄り添って眠るなんてしたことがなかった。なのに千尋の一言に簡単に左右される自分がいる。何だか信じられないよ」

「私が初めて?」

「ああ。考えたら俺の気持ちを変える力のある女なんて、今までで出会ったことがない。千尋は最初から俺の心を簡単に揺さぶったのにな」

『最初から』

凱莉さんのこの言葉は、私にとってとても大きな意味を持つ言葉だった。

凱莉さんくらいのハイスペックな男性にも、私が初めての経験をさせてあげられるということだから。

誰よりも特別だと言われている気がした。
< 214 / 246 >

この作品をシェア

pagetop