ただいま冷徹上司を調・教・中!
「お疲れ様」
営業マンは全員出払い、私と紗月さん、瑠衣ちゃんしかいない6課に、凱莉さんの声が響いた。
キャリーを引きながらデスクに向かう凱莉さんの横顔を見て私は驚いた。
4日前はあんなに元気だったというのに、すっかり疲れ切った凱莉さんを目の当たりにしたからだ。
目の下には薄らとクマができ、寝不足からなのか目もうつろ。
支社周りに得意先の先生の学会参加、新機器視察など、かなりのハードスケジュールだとは聞いていたけれど、こんなにやつれてしまうほど大変だったとは。
心配そうに声をかける紗月さんと瑠衣ちゃんに「大丈夫だ」と返事はしているが、私にはどれだけ凱莉さんが疲れているかがわかる。
私は急いで給湯室でコーヒーを入れ、自分のデスクの引き出しからカカオ70%のチョコレートを添えて、凱莉さんのデスクに持って行った。
「気休めですけど、体力回復してください」
「ありがとう」
間近で見る凱莉さんはやはり疲れている。
疲れていてもクマがあってもイケメンには変わりないところが恐ろしいと思うけど。
「大丈夫ですか?」
デスクに置かれた凱莉さんの手をそっと握ると。
「大丈夫だ。問題ない」
パッと手を引かれて交わされ、私の手は軽く弾かれてしまった。
「……すまない」
「いえ……」
なんだかとてもぎこちない空気が私達を包む。
……なんだかおかしいことになっていないか?
私の不安を感じ取ったのか、凱莉さんは私にだけ聞こえるような小さい声で呟いた。
「仕事が終わったら時間をくれないか?俺の家で待ってて欲しい。話があるんだ」
真剣な表情でそう言った凱莉さんに、私は一抹の不安を抱いた……。