ただいま冷徹上司を調・教・中!
「おはよう。目が覚めたか」

ニッコリと微笑むその顔は、もうすっかり『凱莉さん』だ。

けれど私は『平嶋課長』も大好きだ。

結局私は『平嶋凱莉』が愛おしくてたまらない。

すぐにでも抱きつきたくなったけれど、そこはぐっと抑えて。

「おはようございます。顔洗ってきますね」

私も笑顔で返し、洗面所へと向かった。

歯を磨いて顔を洗い軽く髪を整えると、私は凱莉さんの待つリビングへと急いだ。

「何見てるんですか?」

凱莉さんの隣に座り、ぺたりとくっついてパンフレットを覗き込む。

「いろいろ考えてたんだけどな」

そう言って凱莉さんは私にマグカップを渡してくれた。

洗面所に行っている間に、私用のコーヒーも用意してくれていたようだ。

ありがとうございます、と言って受け取り一口啜ると、濃い焙煎の苦さが広がり私を満たしてくれる。

「昨日、千尋が言ってたじゃないか。良いところだけ組み合わせたいって」

「はい」

「だったらそうできるんじゃないかと思って調べてみた」

「えっ。わざわざ調べてくれたんですか?」

式のことは紗月さんに相談しようと思っていた。

凱莉さんは私の好きにしていいと言っていたし。

それに紗月さんの結婚式はとても素敵だった記憶があり、きっと紗月さんならいいアドバイスをくれると思っていたからだ。

けれどこうやって凱莉さんが私のことを考えて調べてくれるなんて。

さすが凱莉さんだ。

「今までは式場のプランだけしか見てこなかったろ?対応している式場は限られるが、自分達でカスタマイズできるところもあるらしいんだ。それなら千尋がいいと思うことが全部できるんじゃないか?」

凱莉さんはそう言って、私にテーブルの上に置いてあったパソコンを見せた。
< 243 / 246 >

この作品をシェア

pagetop