ただいま冷徹上司を調・教・中!
平嶋課長に近付いて梨央を見返すどころか、一社会人として今後の私のポジションも危ないじゃないか。

せっかく平嶋課長が新規開拓した大きな病院の窓口に指名してもらえるまでに成長できたというのに。

平嶋課長がこの件で、私の進退をどうこうするような人でないのはよく知っているけれど、本当にいろんなことがやり辛い。

何度も座り込みたくなるような自己嫌悪に苛まれながらも、平嶋課長を待たせてはいけないと懸命に気力でシャワーをすませた。

脱衣所には綺麗に畳まれた私の服が置いてあり、クンと臭いをかいでみると、ほんのりと先ほど使ったシャンプーの香りがした。

ドライヤーで髪を乾かすと、自分がすっぴんなことに気付いてしまった。

うっかりカバンの中に入っているコスメポーチを持ってくるのを忘れてしまった。

こんな間抜けな顔を平嶋課長に見られるのはちょっと……。

一瞬そう思ったけれど、それよりも凄いものをお見せしているので開き直ることにした。

「お持たせしました……」

少しでも顔を見られないように、髪で顔を隠しながら俯き加減でバスルームを出ると、平嶋課長は椅子に座ったままスマホを操作していた。

「終わったのか?」

私の方に顔を上げ、平嶋課長の視線はすっぴんの私を捉える。

「すみません。すっぴんなんで簡単に化粧だけさせてください」

カバンを漁りながら申し訳なくいうと、「そんなに隠さなくても変わらないぞ?」と平嶋課長は軽く笑った。
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