ただいま冷徹上司を調・教・中!
『針のむしろ』って、こういうことをいうのかもしれない。

今の私は女子社員の冷たく鋭い視線が耐えられなく痛い。

フロアに入って総合6課に向かう途中で倒れてしまいそうだ。

「気をしっかり持ってくださいね」

瑠衣ちゃんが小声で囁いてくれるが、笑顔で返す余裕もないくらい顔が引き攣ってしまう。

時間ギリギリに出勤してしまったため、ほとんどの社員が一斉にこちらを見ているんじゃないかと思えるほどの緊張感だ。

きっとこの視線の中には和宏や梨央だって混じっているはず。

彼らはなにを思って、どんな視線を私に送っているのだろうか。

なにせ私の噂のお相手は、あの平嶋課長なのだ。

そうとう悔しい想いをしているに違いない。

そんなことを考えていると、なんだか優越感が湧いてくる。

特に梨央の悔しさで歪んだ顔を思い浮かべると、自然に口元が緩んでしまう。

なんて意地の悪い性格をしているんだ、私は。

うまく感情表現できない分、こうやって心の中で毒づいてしまうのが私の悪い癖だ。

けれどこの場合、仕方がないんじゃないか?

彼氏は他の女の誘惑に負け私をあっさりと裏切り、友達だと思っていた同期は興味本位で彼氏を寝取られたんだから。

……全部『元』だけど。

これはいわゆる、最大の復讐になるかもしれない。

和宏は自分と平嶋課長とのスキルの差を。

梨央は自分のアピールに見向きもしなかった最高の獲物をかっ攫われた悔しさを。

思う存分味わえばいいんだ。

…………本当は全くデマだけど……。
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