ただいま冷徹上司を調・教・中!
瑠衣ちゃんよりも私の仕事が先に終わりデスクを片付ける。

帰りの用意をして席を立つと、瑠衣ちゃんは眉を寄せて私を見上げた。

「千尋さん、怯まないでくださいね。平嶋課長が完全否定をしなかったのは、千尋さんにとってある意味チャンスです。千尋さんも否定せずに上手く交わす、が得策ですよ」

そう力を込めて言われると、私もそう思えてきた。

平嶋課長と比べたら、和宏なんてお粗末な男だ。

きっと私が平嶋課長と噂になったことで、また梨央の興味と闘志を刺激してしまったに違いない。

それならそれで、このまま梨央に負けたと思ってもらっていた方が気分がいいというものだ。

「わかった。絶対にボロは出さないように上手くやる」

自分にも言い聞かせるかのように大きく頷くと、瑠衣ちゃんは力強くガッツポーズを見せてくれる。

「余裕の表情が崩れたら負けですからね」

「思いっきり鼻で笑ってやるわ」

「その意気です。頑張ってくださいね。お疲れ様でした!」

「お疲れ様でした。行ってくる!」

瑠衣ちゃんにつられて私も小さくガッツポーズをし、周りに挨拶をしながらフロアをあとにした。

気は重いが何故だか足は軽い。

やはり梨央の知らない平嶋課長を知っているという事実があるからだろうか。

スマホを取り出すと梨央からのメッセージを見直した。

休憩室……か。

和宏を拒絶したこの場所で、梨央にも屈辱をあじあわせてやる。

普段はのほほんとしている私も、そう簡単に許せないことだってあるのだから。

梨央の待つ休憩室のドアを、私は大きく開け放った。
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