ただいま冷徹上司を調・教・中!
「なん……ですか、これ……」

目に飛び込んできたのは、正面の壁一面にある、とても大きな本棚。

そりゃあれだけ仕事もできれば、ビジネス本なんかも山ほど読んでいるだろうとは思っていたが。

ここにあった本は、そういう類のものではなかった。

「久瀬……」

絞り出すように私の名前を呼んだ平嶋課長が私の肩に手を置いて、力なく部屋のドアを閉めようとしたが、私は逆にフラフラとその部屋の中に足を踏み入れた。

本棚にビッチりと並んでいたのは……。

「え……少女マンガ……?」

平嶋課長からは想像もつかない代物、数々の少女マンガや恋愛小説など恋愛に関する著書が所狭しと並んでいたのだ。

まるで古本屋のように多種多様の少女マンガが意味するところは一体何なのか。

まったく考えも及ばないが、さすがにこれは見られたくないものだったのだと瞬時に悟った。

「お前……なんで……開けるんだよ……」

今にも崩れ落ちそうなほどの魂が抜けた表情の平島課長は、ぽつりぽつりとそう言うと、壁に背を預けた。

「平嶋課長……これ、どうしたんですか……?」

今さら何もなかったかのように扉を閉めて笑うなんてこと、できるはずがない。

ならばいっそのこと聞かれた方が、平嶋課長もスッキリするんじゃないだろうか。

「どうして平嶋課長の家に少女マンガが?」

おずおずと問うと、平嶋課長は諦めたかのように溜め息をついた。

「俺の……教科書だったんだ……」

「は……?」

突然何を言い出すんだ、このイケメンは……。

私はその先の言葉を望んだ。
< 85 / 246 >

この作品をシェア

pagetop