ただいま冷徹上司を調・教・中!
いつもならばスパッと結論を出す平嶋課長だが、今回ばかりは頭の中を整理するのに時間がかかっているようだ。

恋愛下手な私だからこそ、面倒くさい女心というものが理解できるという利点がある。

平嶋課長はそれを最大限に利用すればいいだけの話だ。

本当に恋人同士になろう。

平嶋課長からの愛情を求めています。

そう言っている訳ではないのだから、もう少し簡単に考えてくれればいいのだが。

「久瀬の提案をのんだとして、俺は一体なにをすればいいんだ?」

いけるな。

きっと平嶋課長はこの提案を受け入れる。

平嶋課長の言葉で私は確信した。

「恋人ごっこをしましょう」

「ごっこ?」

「そうです。ごっこでも私は平嶋課長の彼女であるという形姿が手に入ります。平嶋課長はごっこの中で恋愛のスキルと女心を勉強できます」

自信満々にそう言ってのけた私を、平嶋課長は溜め息をつきながら見つめる。

だいぶわかってきた。

この表情は……落ちるな。

私の想像通り。

「わかった。提案を受け入れよう」

ほら……やっぱりね。

「じゃあ、たった今から私と平嶋課長は恋人同士です。いいですね?」

「ああ。恋人同士だ」

私のめちゃくちゃな提案は、平嶋課長によって成立した。

私の女としての意地と、平嶋課長の男としての恥があって初めて成立した(仮)カレカノという関係性。

私達の新たな結び付きは、恐ろしいほど強引な形から始まったのだった。
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