ただいま冷徹上司を調・教・中!

ドアを開けて二人で玄関内に入るとさすがに狭い。

私は靴を脱ぎ短い廊下右の扉を開いた。

すぐにダイニングキッチンがあり、そこの明かりをつけると左の引き戸を開ける。

リビングの電気を付けたところで、ようやく平嶋課長が玄関からこちらにやってきた。

「お邪魔します」

そう言って入ってきた平嶋課長は、当然ながら会社で見ている課長の雰囲気ではない。

私だけが知っている平嶋課長に、不覚にもほんの少しだけ胸が高鳴ってしまった。

「ここに座っててください」

突っ立っていた平嶋課長をリビングの小さなソファーに促すと、私はキッチンに置いてあるコーヒーマシンのスイッチを入れた。

「平嶋課長、晩御飯どうしますか?簡単なものでよかったら作りますけど」

この三連休、おかげさまでなんの予定もなかったものだから、買い物に出かけて冷蔵庫の中を充実させておいた。

大抵のものなら作れるだろう。

そう思って声をかけたのだが。

「いや、大丈夫だ」

キッパリと遠慮され、「そうですか」と私は素直に引き下がった。

コーヒーの入ったマグカップを二つリビングに持って行き、私は平嶋課長と向き合うように小さなテーブルの前に座った。

「コーヒーどうぞ」

少し濃いめのコーヒーを口にして、私は短く溜め息を着く。

「平嶋課長にお話があります」

冷静にそう言うと、平嶋課長の表情に緊張が走ったのがわかった。

「平嶋課長は元カノさんと別れた理由、お忘れですか?」

「いや?」

「一応覚えてるんですね?だったら質問はひとつです」

ムスッと不機嫌さを隠さず私は平嶋課長を見据えた。

「恋人同士になってから今日まで、一度も連絡をくれなかったのはなぜですか?」

ぽかんと口を開けてこちらを見る平嶋課長を見て思った。

こいつ……なにも考えてなかったな?……と。

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