戦国恋武

ふぅ〜



4人の足音が遠ざかったのを確認した濃姫さんは、また溜息を漏らす。



「誰か休息が必要だと申す者はおらんのか、全く。…恒興はもう少し付き合ってくれ。この者に色々と説明しなければならぬ。」



恒興さんは返事をして、私と濃姫さんの前に座り私を、濃姫さんは隣から私を見る。2人から視線を向けられ、背筋がピシッとなり緊張が走る。



「お主名前は何と申すのじゃ?」



濃姫さんから名前を聞かれ、視線を少し下に下げて、目を合わせないようにして、小さい声で名前を答える。



「………アマセ。」



「ほう。どんな字を書くのじゃ?」



「…...天地の天、正義の正。」



「……………。」



誰も言葉を発しなくなった。心当たりはないが、何か変なことを言ってしまったのだろうか?私は、恐る恐る視線を上げ、2人を見る。



「天を正すと書いてアマセか。非常に良い名じゃな。」



濃姫さんが、ふっと笑う。
その表情がとても優しくて、自分にそんな表情を向けられたのも、そんなことを言って貰えたのも初めてのことで、顔が赤くなってしまった私はどうして良いのかわからず、再び視線を下げようと…



…した所で、顎を思い切りグイッと上げられ、隣の濃姫さんと再び視線を合わせる。無理矢理なせいか首が悲鳴を上げている。地味に痛い。



「アマセ。どうして目を合わせぬのじゃ?具合でも悪いのか?さっきまで気を失っていたのじゃ無理もない。今日はもう休むか?話は明日にしよう。」



フルフルと首を振る。
具合が悪い訳では無い。首は少し痛むが。
それより今、この状況が何なのか、それが何より気になって仕方が無い。


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