真夜中だけは、別の顔
「……伊吹」
耳元で晴太が名を呼んだ。その瞬間、胸の中に何か込み上げると同時に身体の奥の熱が高まる。
晴太は普段、伊吹を名前で呼ぶことはない。
どうしてこんな時だけ名前を呼ぶのだろう? 晴太が私に触れることに、どんな意味があるのだろう? 聞きたいことはたくさんある。けれど──、
「ふ、」
首の後ろで小さく吐き出される熱い吐息。その熱さにゾクリとして思わず身をよじると、晴太の手がモゾ、と動いた。
普段は伊吹の腹部に添えられるだけで動くことをしなかった手のひらが、まるで意志を持つ小さな生き物のようにそろりそろりと動き始める。
その動きは驚くほどゆっくりと、伊吹の肌の感触を確かめるように上へ上へと這っていく。彼の指が伊吹の胸のふくらみの麓の形をなぞり、そのままゆっくりと頂までを包み込んだ。
ドクドクドク、まるで別の生き物のように私の心臓の鼓動が早まって行く。
音のない静かな部屋。気づかれてしまう。こんなにもドキドキとしていること──。
伊吹の胸をその形ぴったりに包み込んでいる晴太の手のひら。温かくほんの少し汗ばんだ手のひらはそのままに、彼の親指だけが脹らみの先端を円を描く様にそっとなぞっていく。
触れるか、触れないか、それくらいの微妙なタッチでそこをなぞったかと思えば、こねるように嬲り。そうかと思えば親指と人差し指で堅くなった先端をつまみ強烈な刺激を与えて来る。
その緩急の刺激をとめどなく長い時間与えられ、堪え切れずに声を上げた。
「……っ、あ」
限界だった。徐々に熱を蓄えた身体の奥から、何かが溢れ出るのが自分でもわかる。
「──感じてる?」
晴太が耳元で囁いた瞬間、堪えきれなくなった身体がビクンと跳ねた。