真夜中だけは、別の顔
「晴太ってさー、夢遊病の気《け》あったりしない?」
伊吹が何気なく訊ねると、晴太が思いきり怪訝な顔をした。
「──はぁ?! なんだよ、俺、夜中に起き出して何かやってんの?!」
「じゃあ、昴さんに何か……似たようなこと言われたことない?」
「や。ねーけど……って、さっきから何なんだよ」
「うーん? ごめん、何でもない。気にしないで」
晴太がシャワーを浴びている間に、スマホで気になるワード検索を掛けてみた。
〈寝ている時〉〈活動〉〈記憶なし〉出て来たワードが『夢遊病』というものだった。
子供のうちは夜中に急に起き出して歩き出したり……など高い割合でみられる事例らしいのだが、脳と身体の成長過程でなんらかのメカニズムで起こるらしく、通常思春期に差し掛かるまえくらいにはその症状は見られなくなり心配はいらないのだという。
大人の『夢遊病』の事例も意外にも多くあり、その原因はわかっていないらしいのだが、大人になると料理や車の運転など、危険を伴う行動も出てくるため治療が必要であるという。
「……」
晴太の行動は、これに近い──のかもしれないが、引っかかることがいくつかある。
ゲイである晴太が、眠って意識のない状態だといえ、女の私を抱いたりできるものなのか、ということ。
もうひとつは──、
『僕は、蒼月』
あの彼が、晴太ではない別の名前を名乗っているということ。