真夜中だけは、別の顔
* * *
ドアの開閉音の後、ひたひたひた……部屋に響く、静かな足音。
その足音は次第にこちらに近づいて来ると、今夜も伊吹のベッドの脇でピタリと止まる。
いつものように、そっとベッドにもぐりこみ、彼が伊吹の身体を背中から優しく包み込んだ。
それからお決まりのようにルームウエアの隙間から手を滑り込ませ、直接伊吹の肌に触れる。その手はお互いの体温がその温かさを分け合い同じ温度に解けるまでじっと腹部で止まったまま。
もう何度目かになるこの行為、これは彼の儀式のようなものなのか。
やがて私の身体とほぼ同じ温度になった手のひらが、静かに動き出す。まるで触手を持った生き物のように。
ゆっくりと腹から胸へ向かって動き出す。そろり、そろりとその形を確かめるように。
伊吹の胸の麓まで辿り着いた指は、いつものように麓の形をなぞり、ゆっくりとその頂に向かって這いあがって行く。
何度目かのこの行為。彼の指が次どう動くのか分かっているのに──、いや、分かっているからこそなのか、その先に与えられる快感を想像して気持ちが、身体の熱が高まって行く。
「……気持ち、い?」
晴太が耳元にわざと息を吹きかけるように訊ねた。伊吹がそれには答えず、小さく身をよじると、晴太は満足げに小さく息を吐いて再び耳元で囁く。
「もっと、気持ちよくしてあげる」
その言葉に答えることもなく、伊吹は静かに目を閉じた。