真夜中だけは、別の顔
目を閉じていると、感覚が一層研ぎ澄まされる。
そろそろと動く指先。彼の親指がくるくると伊吹の胸の先端を弄ぶ。
「……っ、」
やんわりとした刺激だが、その刺激は伊吹の身体の奥を熱くするには十分で、次第に高まって行く熱にその身体を持て余す。
もっと、触れて。
もっと動いて。
祈るような気もちで小さな吐息を漏らすと、遊び疲れた指先は違う遊び場所を探すかのように、ゆっくりと胸から下腹部に向かって動いて行く。
そろりそろりと動く指。その刺激に身体中がザワザワとする。
ゆっくりとルームウエアのボトム部分に滑り込んだ彼の指は、その先にある下着のラインをゆっくりとなぞり、施されたレースの上をその手触りを確かめるように這っていく。
そのまま下へと降りて来た指は、伊吹の身体の熱が集まっているところを探り当て、円を描く様に刺激を与えて行く。
「……ぁ、」
思わず声が漏れた。焦らすようにゆっくりと動く指にいつのまにか翻弄される。
「伊吹……、気持ちいい?」
下着の布越しにそこに触れていた指が器用に下着の中に滑り込んで、熱く溶けた部分を直接指先で刺激した。ビクン、と身体が跳ねて「や…、」と小さく声が漏れる。
「嫌、じゃないよね? こんなにしてるんだから」
いつのまにか目の前に差し出された彼の指が、暗闇でも分かるほどぬらりと光る。自分の欲情の証を見せつけられ、伊吹は羞恥に顔をそむけた。
「……晴太、意地悪なことしないで」
「言ったでしょう。僕は晴太じゃないよ」
「……」
「僕は、誰?」
「蒼月……」
「僕を呼んで?」
「蒼月」
彼は、晴太の影。
太陽のような晴太とは真逆の、静かな光を湛える月のような蒼月。