真夜中だけは、別の顔
「もし──僕が晴太を支配できるようになれば、今までより長い時間伊吹といられるようになる」

 暗闇の中、私を腕に抱きながら蒼月が言った。
 事実、以前に比べ蒼月の出現率は上がってきている。彼自身がそれを少しずつコントロールできるようになってきているのもあるが、意図的に眠らせるなどして晴太の意識を奪う事が出来ないわけではない。

「……それは、そうなんだけど」
「そうなんだけど?」
「……」

 言い淀む私に、蒼月がその答えを促すようにそっとキスをする。

「蒼月の時間が増えたら──、晴太が晴太じゃなくなっちゃう気がする」

 明るくて、人懐っこくて、友達も多くて。ちょっとだらしないところもあるけれど、憎めなくて。
 男のくせに恋愛体質で、好きになったらその人しか見えなくなっちゃって。大好きな昴さんの為なら、どんなことでもできちゃって。

 大学を卒業したら、昴さんと住むんだって楽しみにしてる。
 好きな人とこれから続いて行くであろう晴太幸せな未来が消えてしまうかもしれない。

「蒼月に傍にいて欲しいって思うけど、晴太が幸せでないのは嫌だな……」

 その言葉に蒼月が少し寂しげに目を伏せた。

「……僕ならなれるんだよ。伊吹がいてくれるだけで幸せに」

 蒼月の静かな声が耳元で響く。
 蒼月の想いがうれしくないわけじゃない。蒼月と離れたいわけじゃない。
 けれど、私たちが晴太の幸せを奪っていいはずもない。

 

  
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