真夜中だけは、別の顔
「変わりない?」
「イブちゃん、いつもそれ聞くよなー。べつに変わりねぇよ」
「そう」
「イブちゃんは彼氏───、」
晴太が何か言いかけた時、
「──本宮、そろそろ」
少し離れたところで伊吹たちの様子を窺っていた三輪が遠慮がちにではあるが、左手の腕時計を右手の人差し指ででトントンと指示した。バスの時間が迫っていることの相図だ。
伊吹は「いま行きます!」と返事を返し、晴太に向き直った。
「……あの人ね、実はアタシの彼氏なの。鬼上司でいびられてるけど」
事実、伊吹は一年ほど前から三輪と付き合っている。
新人の頃から何かと縁があると思っていたが、食事に誘われたり、仕事の指導が熱心なのも、実は彼なりのアプローチだったと知ったのは最近の事。
「へ?」
「心配しなくても。それなりに、楽しくやってるから」
そう言って笑うと、晴太が三輪のほうを見て、ああ……と何か納得したように笑った。
「それじゃ、行くね」
「ああ。また連絡する」
「晴太も仕事がんばって」
「サンキュ」
私たちは慌ただしく手を振って別れた。