浅葱色が愛した嘘
だんだんと桔梗の脈が弱くなっている事に沖田は気づいた。
『よせ!死ぬな!
ゴホッッうっ……』
しかし、沖田の体も………
もう、限界だった。
『総司…笑ってくれないか?
最期くらい笑ってさよならをしよう。』
最期……
もう、桔梗と生きていく事を出来ない。
もう、桔梗と日々を過ごしていく事が出来ない。
『桜が綺麗だな……』
桔梗は力なく、桜の花びらに手を伸ばした。
もう、桔梗の命は尽きかけている。
『あぁ、そうだな。
君は何よりも美しい僕の花だ。
桔梗…愛してるよ。』
深く、長く、二人は口づけを交わした。
沖田の羽織を掴んでいた桔梗の手は
やがてスルリと力を失い落ちていく。
『…………桔梗?』
桔梗はまるで眠っているかのようだった。
苦しかったはずなのに、体中は痛みで耐えきれなかったはずなのに、
その表情は柔らかく、微笑みを浮かべていた。
『桔梗…!!!』
もう、名前を呼んでも返事など返ってこない。
もう二度と…あの声で名前を呼んでくれはしない。
もう二度と動く事のない体は
まだ生きているかのように温かかった。