浅葱色が愛した嘘
縁側から見える空はまるで人々をあざ笑うかのように蒼い。
雲一つないこの空でもやがては鉛色の空に変わる瞬間がやってくるのだろう。
まるで、人を殺す時の桔梗の目のように。
『なぁ、桔梗…』
不意に沖田は澄朔ではなく、本当の名を呼んだ。
『沖田さん、私は澄朔だ。』
『いいじゃん別に。
二人きりなんだし、
他の奴の気配は感じないし。』
いつもは冷たい目をしているのに、
何故か今の目は温かい。
沖田という存在は桔梗にとって不思議な人物でもあった。
『お前は人を殺す事をどう思う?』
『え?』
『俺たち新撰組は、国を守るために幕府に仕えてる。
でも町の人間は俺たちを人斬りの集団としか思っちゃいねぇ。
たまに分からなくなるんだよ。
何がただしいのか。』
最後はくだらない、と吐き捨て刀を手に取り立ち上がった。
『ごめん、ちと寝言をいい過ぎた。』
『けど、沖田さんには刀しかないでしょう?』
桔梗は言った。
『誰に何も言われても、沖田さんには守るものがある。
国や新撰組ってものが…
でも私には復讐だけで守るものはない。
』
私の喉の渇きは血でなければ潤わない。
『さぁ、そろそろ行こうか。
土方さんにバレたらめんどくさいからね。』
沖田は微笑むと
『おいで、澄朔。』
偽名である桔梗の名前を優しく呼んだ。