浅葱色が愛した嘘
『おい!総司はいるか!』
荒々しく稽古場の戸が開いたかと思えばそこには鬼の副長と呼ばれる土方がいた。
『なんですか、土方さん。
稽古の邪魔しないで下さいよ。』
『うるせぇ、
ちょっと澄朔借りてくぞ。』
土方は乱暴に桔梗の腕を掴んだ。
『いたっ……』
急な衝撃で少しばかり右腕に痛みが走る。
そんな様子に気づいた沖田は竹刀を土方に向けた。
『土方さん…僕の隊士に乱暴はよして下さい。』
『何の真似だ、総司。
いくら竹刀でも副長に刃を向けるたぁ、切腹もんだぞ。』
土方の機嫌がだんだんと悪くなる。
しかし何故か
それと同じぐらい沖田の機嫌も悪かった。
辺りでは隊士たちがヒソヒソと心配をしている。
そんな二人を見兼ねた桔梗は少し声を引くくした。
『沖田さん、竹刀を下ろして。
土方さん、腕痛い。引きちぎるつもり?』
桔梗の言葉に沖田は竹刀をおさめ、土方は腕を離した。
はぁ、めんどくさい。
なぜ二人はいつもこうなるんだ?
着ていた羽織を整え、土方に向き合う。
『私に用があるなら早くぞ。
沖田さん、あなたも。』
桔梗は沖田が呼ばれている事も分かっていた。