仮面のシンデレラ《外伝》
これは夢か。
一瞬だけ、そう思った。
魔法なんて信じられるわけがない。
しかし、僕は確かに見た。
彼女が魔法を使い、瞳の色を変え、僕をイバラから守るところを。
僕は、静かに尋ねる。
「…もしかして、あのレンガの路地の奥が不思議の国と繋がっているの?」
「!」
エラは、はっ!と目を見開いた。
まさか知られていたなんて、と言ったような表情だ。
「…嘘じゃ…ないんだよね?」
僕の問いに、彼女は深く頷いた。
再び沈黙が部屋を包む。
「…僕は、エラのことを信じるよ。」
「!」
彼女が、はっ!と顔を上げた。
2人の視線が交わる。
…僕の言葉は、偽りない本心だった。
もし、彼女がこの世界の住人でないのなら
電車を乗るときに改札の通り方を知らずに感動していたことも、シートベルトの存在を知らなかったのも、妙に電車に疎かったのも納得がいく。
「…エラは、どうして人間界に?」
すると、彼女はゆっくり話しだした。
「不思議の国の魔法使いは、人間界に行くことが禁じられているの。だけど唯一、“シオリビト”だけが人間界に行くことができる。」
「“シオリビト”…?」
「人間界で生まれた新しい童話の住人を、不思議の国に案内する役目のこと。…これでも、私は国家公務員なのよ?」
そういえば、初めて彼女を見かけた時も、エラは“童話コーナー”にいた。
あれは、本の世界の住人を連れ帰る“シオリビト”の仕事だったのか。