今夜、お別れします。

目の前の桐谷は、今までにないくらい優しく微笑んでいる。


そして涙を指の腹で何度も拭ってくれている。

そのうち指だけじゃなく唇で私の頬に触れた。

流れる涙を舌で舐めとられた。

身じろぐ私を見て、桐谷はくすりと笑った。


「何度言えばいいのかな?」

「……?」


「萌奈のことが好きだって……大切なんだって、何度言えば伝わるのかな?」


そうだ。

桐谷は何度も何度も伝えてくれていたのに、私が弱かったから、自分に自信がなかったから、桐谷を疑った。


悪いのは弱い自分。


そんな私を桐谷は許すと言ってくれる。

それなら、私がすべきことは1つだけ。

強くなること。

桐谷を信じ続けるために、自分に自信をつけて強くなる。

もっと自分の気持ちに素直になって、桐谷が伝えてくれているように、私も桐谷に伝え続けていこう。


「桐谷、私ね……」


「……ん?」


「今夜、お別れします」


「は、?……えっ⁉︎」


言葉足らずな私に、驚きと不安の入り混じった顔を向ける桐谷。


そんな彼の首に抱きついて、チュッと音を立てて彼の唇にキスを落とす。



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