今夜、お別れします。


「桐谷さん、今どこにいるの?」


「近くにいるみたいです……けど」


私の拙い企みをアッサリと見破った田丸さんと、このままこうしているのも居心地が悪くて、この場を去りたい気持ちが最優先だった。


帰る理由を必死で探していた私は、田丸さんの問いかけに深く考えずに答えてしまった。


「へぇ。仕事では強気な彼も、恋愛に於いては意外と弱くて狡い部分もあるのかな?」


桐谷の分析を始めた田丸さんの意図は分からなかった。


でも、今こうして2人で話している姿を桐谷はまだ見ているんだろうか?それともとっくの昔に帰ってしまったのだろうか?


あの電話を切ってから数分はたった。

見える場所にいたのなら、駆けつける気があるのならすでに姿が見えてもいい頃だ。

それがないということは、彼は私との事を公表する気はなくて、もしかしたらもう終わりにしてもいいと考えてるのかもしれない。


別れる。


彼以外の人と夜こうして2人で飲みにいっている時点で、そういう結論も考えていた。


実際付き合っているといったって、秘する仲の私達の付き合いは、彼がたまにうちに会いに来て、ご飯を作ってあげて夜を一緒に過ごすだけ。


昼間、2人で会うことは絶対になかった。

そんなの、本当に付き合っていると言えるんだろうか?


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