シンデレラのドレスに祈りを、願いを。

車に荷物を積み、精算をするためにゲストセンターに寄った。全額出すといって聞かない悠季くんがお財布からクレジットカードを取り出した。

もう未成年じゃない、カードを持つのはごく自然なことだけれど、私が驚いたのはその色だった。黒い券面のそれは審査基準の厳しい信販会社のもので、年間数百万円以上の利用実績がないと発行されない。パーティーコンパニオンでそのカードをちらつかせて自慢げに誘ってくるお客様に遭遇したことがあったから。

悠季くん位の年齢の子が持てるものではない。

センターをあとにして海に向かう。悠斗は悠季くんの手を引き、海に飛び込んでいく。私はふたりのはしゃぐ姿をぼんやりと眺めていた。

悠季くんと生活することが想像できない。それは彼が学生だから?


帰り道も悠斗はチャイルドシートで眠ってしまった。
運転する悠季くんを助手席から眺める。日焼けして頬が赤くなっていた。


『この車はいくらしたの?』
『成人式のお祝いに両親が買ってくれたんだ、だから値段は知らない。知り合いのディーラーとの付き合いで決めたみたいだけど』
『そう。マンションも?』
『マンションは僕が選んだけど父と兄さんたちが卒業祝と就職祝を兼ねて買ってくれるって。そのあとの家賃や光熱費は僕持ちだよ』
『就職は』
『サトーホテルズの秘書室。当分は父と一緒に挨拶まわりと雑用かな。どうして?』
『仕事、大変なんじゃないかなって』
< 36 / 74 >

この作品をシェア

pagetop