シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
そんなふうに私と悠季くんとの距離は縮まっていった。


*―*―*

悠斗が高校3年に進級し、しばらくしたある日。猛暑と予想された夏が雨の多い冷夏で終わりを告げた9月半ば。

カウンター席でアイスコーヒーを飲む悠季くん以外は誰もいない客席。氷が溶けてカランと音を立てた。休憩がてら私は隣にかけた。すると悠季くんは私の手を握り、甲にキスを落とす。

その唇をそれぞれの指の関節に当て、ちゅ、とキスをする。すべての関節にキスを終えると今度は指先を吸った。


『もう。だめ、くすぐったい。やめて』
『かわいい。早百合さん』
『からかわないで』
『早百合さん、あのさ』


私の指へのキスを続けながら、悠季くんは言葉を続けた。


『お子さまランチって18歳まで?』
『どうしたの、いきなり』
『お子さまランチ食べさせる約束したから。悠斗くん、もうすぐ誕生日でしょ』
『やだ。覚えてたの? もうお子さまランチなんて……え?』


悠季くんは大真面目に私の目をのぞき込んでいた。


『悠斗くんに会わせてくれないかな。もう高校も卒業になるよね? いいタイミングだと思うんだ。どう?』

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