シンデレラのドレスに祈りを、願いを。

レストランを出る。私は悠季くんとふたりだ。
このまま帰りたくない。もう少し、一緒にいたい。

そう思っていると悠季くんは私の手をすくい、握った。


「早百合さん、行きたいところがあるんだ」
「どこ?」
「とりあえずこっち」


悠季くんは私の背に手を当て、そっと押した。エレベーターに乗り、3階で降りる。

そこは照明も必要最小限でシャンデリアも暗いまま。
立ち入り禁止と書かれた看板があちこちに立てられていた。

当然お客様はひとりもいない。代わりに作業着を着たスタッフたちがバタバタとせわしなく動いている。

正面には壁画のような洋画、広い通路には大きなフラワーアレンジメント、巨大な壺。

ひょっとして……。


「ここ、悠季くんと出会ったところ?」
「そうだよ。早百合さんが段ボールを転がしたところ」
「もう。わざと転がしたわけじゃないわ。でも、懐かしい……」


ふかふかだった絨毯はこなれて平らになっている。壁も暗いせいかくすんで見え、時間の経過を感じさせた。


「あれから20年近く経つ。だからリニューアルに入るんだ。いろいろ古くなったからね」
「そう……」
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