シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
「結婚するよ」
「な、なにを言ってるの? 悠季くん、もどるんでしょ? 私なんかと結婚してどうするの?」
「早百合さんこそなにを言ってるの。僕には早百合さんしかいない。僕のお嫁さんになって」


背中について当てられていた手は私の頭に移動し、愛おしむように髪をなでる。


「まずは早百合さんの実家から。まずは報告に行こう、悠斗は無事育ってもうすぐ高校を卒業することを。そして早百合さんがどうして僕の身分を明かさずにひとりで育てようとしたのかも。親として早百合さんの状況は知りたいはずでしょ?」
「ダメよ。厳格な父が許してくれるはずはないわ」
「許されなくてもいい。とにかく報告には行こ? 許すも許さぬも向こうの感情だから無理強いはしない。あと、うちの親にもね。こっちは大丈夫だと思うけど。初孫が人質にいるしね」


悠季くんは私を一度引き剥がし、私の肩に手を於くと、少し屈んで私の顔を見上げた。優しく私を見つめる悠季くん。


「そしたら式を挙げよう。そしてウェディングドレス作ろ? 教会で悠斗と3人で式挙げよ? 新婚旅行はどこがいい? なんなら悠斗も連れて行く? 新居はどうする? 一戸建て? マンション? 一緒にサトーホテルズグループを切り盛りしてくれたら嬉しいけど、このままカフェを続けてもいいよ。そしたら部屋はタワーマンションにする? 目の前にあるしね。あ、その前に婚約指輪か」


瞳に涙がたまり、悠季くんの顔の輪郭がぼやけて見えなくなる。


「どうして……どうして……?」

「僕には早百合さんしかいない。何度も言わせないで? ずっとずっと好きだった。いまでも好き。愛してる」


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