バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
「こんにちは~、今日はどうします?」
笑顔で美容師さんが私の髪を両手でくるくるさわりながら聞いてくる
ずっと髪を切ってくれていた人が産休に入り代わりに担当になったみたいだけど、この人は頻繁に髪を手で直接触るタイプみたいだ
「このまま伸ばそうと思ってるんで、結びやすいように整えて下さい」
彼が亡くなって一人で子供を育てる覚悟を決めてショートにした髪もいつの間にか結べるほど伸びてしまった
お風呂上がりにドライヤーをかける時間ができるほど子供も大きくなった
ショートも楽だったけど、伸びると結べて寝癖もほとんど分からないのでこれはこれで楽だ
それに今ではこの髪を指に絡ませて遊ぶ人がいるけど、それはわざと髪を伸ばす理由には入れない
「相変わらず綺麗っすね~、でも、トリートメントするともっとツヤツヤになりますよ、指通りもよくなるし」
手櫛をしてさらさらと私の髪を落としながら言う
(指通りか…)
「では、トリートメントもよろしくお願いします!」
シャンプー台に移動してシャンプーとトリートメントを受ける間も私はいつものようにうとうとできない
帰ったら彼がいると思うと気が気でない
玄関を出る前にきつく彼についてこないように念を押すと彼は大人しく引き下がった
その代わり私の腕を引き、軽く音がなるようにキスをした
「わかった、できるだけ早く帰ってこい」
不意打ちで顔が真っ赤だったかもしれない、直前の会話の後もあっていつも以上に心臓が飛び跳ねていたので逃げるように玄関を出た