《短編》ガラクタ。
淡い明かりはDVDからのもののみで、口付けを交わし合いながら二人、纏っていた衣服を脱ぎ捨てた。


やはり冬も近く、肌寒さを覚えて彼を引き寄せるように背中に腕を回せば、唇は徐々に下へと移動するように触れる。


吐息混じりのそれに次第にあたしも鼻に掛かったような声が漏れ、帳に響く声色は甘く溶けるのみ。



「良いね、お前。」


ひどく体の芯を痺れさせるような声が耳元に落ち、そんなもの程度で感じている自分が居たことには驚いてしまうのだけれど。


アラタがあたしの下着の中へと手を滑らせれば、卑猥な音だけが部屋中を支配し、無意識のうちに呼吸が乱れ始めるあたしの口を塞ぐように、彼はまた、舌を絡めた。



「……マイ…」


初めて呼ばれたあたしの名前が漂い消え、アラタは深く自身を挿入させた。


もしかしたら無意識なのだろうか、時折そんな風にして紡がれた名前が宙を泳ぎ、この男とのセックスは本気でヤバいのかもなと思わされる。


幾分苦しそうな顔が薄明かりに照らされて、そんなものを見つめながらあたしは、アラタの腕の中で何度果てたのかももうわからない程。


何でこんなにあたしの感じる場所を知っているのか、そして彼はまるで味わうように、こんな行為を堪能してるかのようにも見えるのだから。


セックスしてる時だけ、あたしは生きてることを感じられるんだ。


だったらこのままあのシマウマのように、ヤってる最中に食べられて死んでも良いのかな、なんてことを、遠のく意識の端で考えた。



「お前の顔見てると、俺もヤバいわ。」


苦し紛れに吐き出された台詞はイったばかりのあたしの意識を容易く引き戻し、そしてピストンを早める動きに結局、ほぼ同時のように二人で果てた。


あたしの中へと欲望の全てを出し切り、彼はうな垂れるようにして、またひとつキスを落とす。


乱れた二人分の息遣いだけが部屋に響き、鎖骨の辺りが彼の前髪に小さくくすぐられた。


それがまるで小さな子供が甘える様にも見え、愛しささえも感じた気がしてあたしは、“アラタ”と、呟くように彼の名前を紡ぎ、頭を撫でてやったのだ。


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