《短編》ガラクタ。
二人、ベッドへと体を沈めれば、今日も何かのDVDが流れていたけど、でも、それを観ることもなくあたし達は、キスを交わした。


この前よりも熱っぽい顔したアラタの吐息が首元に落ち、あたしの息も無意識のうちに上がってしまう。



「もう濡れてんじゃん。」


そんな言葉に意識を手繰り寄せてみれば、そういえば昼間にシゲちゃんとセックスをしんだったと、その時やっと思い出したんだけど。


でも、そんなんじゃなくて、アラタの指先の動きひとつ、声色ひとつで感じてる自分が居て、彼に覆い被さるようにまたがった。



「んな顔してんなよ、マイ。」


多分、虚ろな瞳を投げていたのだろうあたしにそんな言葉が向けられ、そして唇の端を上げる余裕ぶった顔がムカついて、彼のモノを自らの中へと沈めさせてやった。


甘い喘ぎとスプリングの規則的に軋む音が乱雑に宙を舞い、まるで鳳凰を支配しているような気分にさせられる。


そんなことに快感を覚えていれば、下から突き上げた彼によって簡単に果てを見させられ、本気でどうしようもないと思うんだけど。


熱を帯びた体温を交わらせ、愛しささえも覚えるアラタの背中に、大事にしている爪を喰い込ませた。


鳳凰もアラタ自身も、その血の一滴も欲望の全ても、全部全部欲している自分が居て、あたしって際限のない女だったんだと、快楽に身を委ねた意識の中でそんなことを思った。



「……アラタ…」


「ん?」


「…これ、欲しいっ…」


「良いよ、全部お前んだ。」


理性さえ失っている行為の最中に交わした台詞は、何が何だったのかわからなかったけど、彼はそんな言葉の後、あたしの中に全てを吐き出した。


全部あたしのだと言ってくれたアラタの言葉は、どこまでが本当なのか。


だけどもそれを聞くことなんてなかったし、乱れた二人分の呼吸を整える息遣いだけが、静かな帳に響いて消えた。


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