《短編》ガラクタ。
「…アンタもコイツに拾われた人?」


「あぁ、俺は違いますよ。
唯一、アラタさんの中学の後輩っす。」


「へぇ。」


「けど、初めて見ましたよ。
俺ら以外の前でこんなに無防備に寝てるアラタさんの姿。」


コージくんは柔らかく笑う人で、まるであたし達を微笑ましげにでも見つめているような瞳に、どうしたものかと思ってしまう。


何よりアラタは、初めて会った日からあたしと一緒に寝てるんだし、言われている言葉ですら信じがたかったのだ。



「やっぱ、彼女サンの前だと違うんすね。」


「言っとくけどあたし、コイツの彼女なんかじゃないから。」


「…そうなんすか?」


「そうよ。」


起こさないように、だけども無理やりにアラタの頭を肩口から退かし、あたしはやっと解放されたように背伸びをしてから、出された朝食に手を伸ばした。


味噌汁をすすってみれば、本当に美味しくて、やはりプロは違うなと、そんなことを思ってしまう。



「ほら、この人って実は寂しがりじゃないっすか。」


「…そう?」


「DVDつけてないと寝れないのが証拠っすよ。
色んなヤツを拾ってくるのも、きっと同じように寂しがってる人間を放っておけなかったんだと思います。」


そんな風に言われれば、納得する部分もあったんだけど。


だけども、だからどうしたと言うわけでもなくて、フワフワのだし巻き卵を口に放り込むようにしてあたしは、それと一緒に言葉を飲み込んだ。



「てか、敬語使わないでよ。
多分、あたしの方が年下だし。」


「いや、これは癖みたいなもんなんで、気にしないでください。」


「気になるよ、普通に。」


呆れたようにそう言ってみても、コージくんは柔らかく笑うだけ。


それが朗らかな朝の光景と嫌にマッチしていて、まぁ良いやなんてことを思ってしまうんだけど。


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