《短編》ガラクタ。
「いい加減起きなきゃ、ご飯冷めるよ!」


コージくんと二人、さっさと食事を終わらせ、思い出したようにアラタの体を揺すってみた。


眉を寄せたような瞳は徐々に開き、だけども相変わらずの不機嫌と言った様子で、やはり寝起きは相当悪いと思わされるんだけど。


ソファーに横になっていたアラタは上体だけを起き上がらせ、宙を泳がせるようにして手探りで煙草を探す。



「…俺、寝てた?」


「寝てた。」


「…腹減ったぁ…」


やっぱりあまり会話は噛み合わないんだけど、もう半分は諦めと慣れで、“だったら食え!”とあたしは、彼のまだ一口しか吸っていなかった煙草を取り上げた。


多分、ここまで人の世話なんて焼いたことないんだろうけど、でも、放っとくと本当にコイツは廃人になりそうだから。


朝の陽は部屋の色を一段明るく染めていて、何故かニコニコとしているコージくんの顔が照らされていた。



「てゆーかあたし、そろそろ帰る。」


「そう。」


先ほど見た携帯のディスプレイにはシゲちゃんからのメールや着信が何件か入っていたし、それにどっちみち、今日はバイトだし。


けど、別にそれをわざわざ言う理由なんかなかったし、あたしの言葉にアラタも、短く返すだけ。



「送っていこうか?」


「良いよ。
てかアンタ、何かまだフラフラしてるし。」


「いや、玄関まで、って意味。」


気遣ってやったあたしの言葉も、そんな腹の立つ台詞に簡単に掻き消された。


口元を引き攣らせて無視を決め込み、立ち上がってバッグを手に取りあたしは、嫌味のようにコージくんにだけ笑顔を向け、“御馳走様”と告げる。


アラタの顔はそれが面白くないとでも言った様子で、そんなものに笑いさえも込み上げるんだけど。


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