《短編》ガラクタ。
「アンタ、あたしのこと3週間も放置して、どこで何やってたの?」


「心配してくれてたんだ?」


「違うわよ、馬鹿。」


「何だ、残念。
折角お前が会いたがってると思って真っ先に電話してやったのに。」


フッと口元だけを緩めた彼は、あたしから体を離して煙草を咥えた。


少し開けられた窓の隙間から冷たい夜風が入り込んできて、二人分の熱で暖められた車内が急速に冷えていくのを感じてしまう。


答えになっていない答えはいつものことで、幾分冷静になった頭で眉を寄せた。



「鳳凰はあたしのものよ。
他の誰にも触らせたりなんかしない。」


「へぇ、そりゃ執心だな。」


「他のヤツが触ったら、そいつもアンタも殺してやる。」


自分自身、何でここまでただの刺青の鳥にこだわっているのかはわからなかった。


それでもあれに触れて良いのも、もちろん爪を立てて良いのも、あたし以外には居ないとさえ思えるほどに、狂ったように執着しているんだ。


吐き出された白灰色は僅かに揺れ、目を細めたアラタは“良いね、それ”と小さく笑う。


あたしも頭がおかしいんだろうけど、でも、コイツも十分頭がおかしいのだろう。



「そんなに俺が欲しかった?」


「当たり前よ。」


「良い子だ。」


そう、挑発すような瞳は嬉しそうに伏せられ、アラタはあたしの頭を撫でるだけ。


例えばジャンキーがネタ喰って落ち着けるのと似たような感覚なのだろう、ひどく安堵している自分が居た。


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